
記憶や土地に刻まれた痕跡を手がかりに、絵画やドローイングを通して「生きていること」の輪郭を探っている。
日常にふと立ち上がる違和感や、かすかな手ざわりに触れたとき、見えない時間や物語の気配が浮かび上がる。
私の制作は、そうした感覚をかたちにしようとする試みだ。
曽祖母の記憶が、その起点にある。
戦時中、樺太からの引き揚げの際に、他の船が魚雷で沈む光景を目撃した彼女は、命を拾った体験の象徴として「ロシア人から分けてもらったパンの味」を語った。
私は、その記憶を現代に生きる身体として引き受ける。その瞬間、個人の物語は私自身の起源と交差し、生の連続性を可視化する。
鉛筆や木炭によるドローイングは、記憶の曖昧さや消えゆく痕跡を描き出すのに適しており、油彩は感情の深さや時間の堆積を伴う物質性を持つ。
モチーフやスタイルは一定ではないが、それぞれの作品で、今この瞬間に立ち上がる「生」の気配をとどめようとしている。
また、食や旅、映画といった日常的な営みにも、過去から現在へと続く生の断片が感じられる。
イラストレーションの形式でそれらを描くことも、根底にある問いかけは絵画と変わらない。媒体を横断しながらも、私は一貫して「生の断片」を拾い上げている。
過去に生きた人々の営みは、たとえその人が亡くなっていても、文化や風習、記憶のかけらとして今に受け継がれている。
そうした断片に触れることは、死を想像することで生の現在形を浮かび上がらせる行為でもある。
作品が誰かの中に眠る記憶や感情と静かに重なり合い、それぞれの「今」と「かつて」のあいだに緊張と余白をつくることができればと考えている。
武蔵野美術大学油絵学科油絵専攻卒業。
油絵やデジタルイラストなど様々な媒体をつかって、日々出会う文章やイメージをモチーフとして、人々の心の揺れ具合を探究する。
豊松りく Riku Toyomatsu
2021 武蔵野美術大学油絵学科油絵専攻卒業(Musashino Art University, Department of Painting)
Exhibitions
Solo Exhibitions
2018 「ひとびと」武蔵野美術大学 (Tokyo, Japan)
2019 「Life」Cafe Hi Famiglia (Tokyo, Japan)
2024 Primus wellness kitchen&market (Shiga, Japan)
Group Shows
2018 「 ミレニアル☆レボリューション」レンタルスペースさくら 原宿竹下口 (Tokyo, Japan)
「 ブドウ狩り」galeria.mano.a.mano (Tokyo, Japan)
「きずな展」Uptown Koenji Gallery (Tokyo, Japan)
2019 「sunny pool」Gallery Majerca (Tokyo, Japan)
2021 「MUSASHINO ART UNIVERSITY DEGREE SHOW 2020」武蔵野美術大学(Tokyo,Japan)
2023 「君もまた優しさのために、」GALLERY 33 NORTH A (Tokyo, Japan)
2024 「Small Paintings」GALLERY IRO (Tokyo, Japan)
「Fragrance Exhibition」 between gallery (Tokyo, Japan)
2025 「EPIC PAINTERS Vol.15」THE blank GALLERY(Tokyo, Japan)
「see some scene」GALLERY IRO(Tokyo, Japan)
Works
2023 ON music project主催 リレーコンサート Vol.126
日髙真希ピアノリサイタル『祈り』
2024 ピアノ教室発表会プログラム作成
2025 サロン・ド ノエル様
Email : riku.toyomatsu@gmail.com